これからマイホームの購入予定がある人にとって、住宅ローンは日々の生活を助けてくれる便利な存在です。ただ、住宅ローンを長く組むとなれば、それだけ毎月の返済と向き合う回数も増えていくもの。そうしたとき、地震や災害などでマイホームが損傷して補修費用がかさむと、毎月の返済額の負担も大きくなります。そこで今回は、被災時に役立つ、住宅ローン返済の対策方法をご紹介します。
地震保険だけでは「住宅ローンの返済までカバーできない」のが現状
災害時といった万一のとき頼りになるのが地震保険です。ところが、地震保険には制約もあり、住宅ローンの返済に直接関係することはありません。
建物および家財の保険金額
地震保険とは、主に地震やそれに起因する津波、火災による損壊で被った損害が補償される保険です。言い換えれば、地震に関係する二次的被害を受けた場合に、保険会社から地震災害専用の保険金が支払われることになります。ただ、補償される範囲は「建物」および「家財」のみという限定条件がついています。また、保険金の限度額は、建物が5,000万円、家財が1,000万円です。
「全損」「半損」「一部損」により保険金額は異なる
保険金には限度があることから、損害の大小に応じて4つにランク分けされています。最も損害の大きい「全損」をはじめ、「大半損」「小半損」「一部損」の順に続く4タイプです。全損では地震保険の保険金額の100%が支払われ、大半損以降は60%、30%、5%と低くなります。保険金額が支払われる割合は、建物も家財も同じです。
火災保険に加入していることが前提
実は地震保険に単独で入ることはできません。地震保険は火災保険という枠のなかの1つなので、火災保険とセットで契約する必要があります。ちなみに、地震保険の適用範囲は「火災保険の保険金額の30~50%」というのが一般的です。とはいえ、地震保険は「損害を被った“建物や家財”に対して保険金額が補償される」ものであり、住宅ローンを補償するものではありません。つまり、地震保険に加入していても、住宅ローンの返済中に地震に遭ってしまえば、壊れた自宅を再建したとき(あるいは新居に住み替えたとき)のローンとあわせて「二重ローン」になる可能性は高くなります。
実は被災時の住宅ローンを免除or軽減する方法がある!
東日本大震災では、住宅ローンの二重返済を解消するための「被災ローン減免制度」が特別につくられました。2016年からは、東日本大震災以外の自然災害にも適応できる、全国銀行協会を中心とした制度の運用がスタートしています。ここでは、二重ローン対策に有効な「被災ローン減免制度」について見てみましょう。
被災ローン減免制度の仕組み&メリット
被災ローン減免制度とは、ローン返済中の被災者が最も多額のローンを借りている金融機関に対して、返済残高の減額や免除を申請できる制度です。弁護士や公認会計士などの登録支援専門家が、申請者と金融機関の仲介役を担い、簡易裁判所の特定調停の手続きをもって、返済残高を減額するか免除するかが決まります。返済免除になっても自己破産あつかいにはならず、弁護士の依頼費用もかかりません。また申請者は、最大500万円+生活再建のために必要な支援金を手元に残すことができます。
被災ローン減免制度の対象者
自然災害を受けた際、住宅ローンをはじめとする「3つのローン」を返済中の人が、被災ローン減免制度の対象になります。住宅ローン以外は、自動車ローンと個人事業ローンの2つです。また、世帯の年収が「730万円未満」をはじめとする、いくつかの目安も設けられています。
被災ローン減免制度の申請方法
被災によりローン減免を希望する場合は、最も多額のローンを借りている金融機関を訪ね、返済残高などを確認することからはじまります。次に、地元の弁護士会を経由して、自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関に依頼します。同機関で登録支援専門家を手配してもらったあと、今度は金融機関と協議を行います。協議の際、登録支援専門家に「特定調停で必要となる書類作成」への支援を依頼することも可能です。金融機関の同意を得られたら、特定調停がはじまります。調停では、登録支援専門家の出頭は認められていないため、申請者だけで出頭します。
金融機関でも被災時の住宅ローンを減免してくれる!
被災ローン減免制度以外にも、一部の金融機関が実施している「自然災害時に返済の一部が免除される特約住宅ローン」という二重ローン対策に有効な手段もあります。
最大24回分のローン返済相当額が免除される
都市銀行や地方銀行が実施する、自然災害時の返済が一部免除される特約住宅ローンを契約しておけば、全壊と認定された場合につき「24回分のローン返済の相当額」が免除されます。損壊の程度は全壊を含めた、大規模半壊(12回分免除)と半壊(6回分免除)の3種類です。免除の開始は、「り災証明書」を提出した日の翌月になります。
住宅ローン残高の50%相当が免除される
ローンの返済回数ではなく、住宅ローン自体を半減してくれる特約住宅ローンというのもあります。ただ、認定される条件は「全壊」に限られます。
対象や条件が限定されるので注意が必要
特約住宅ローンは被災ローン減免制度と異なり、事前に契約を交わしていることが前提条件になります。また、市区町村などで発行される「り災証明書」を提出することで、金融機関に認定されるものです。そのほか、損壊の判定基準なども金融機関によって異なるため、特約住宅ローンを利用する場合は事前に問い合わせておくとよいでしょう。
耐震性能を備えた「地震に強い家づくり」も1つの手!
「住宅ローンの残高がまだ結構ある」という場合は、地震保険の確認や見直しはもちろん、今回ご紹介した「被災ローン減免制度」や「金融機関の軽減制度」などの活用が有効です。とはいえ、いつ震災に遭うかの予想はつきにくいものでもあるため、耐震性能に見る「地震に強くて安心できる家づくり」から検討してみるのも1つの手かもしれません。
参考:
・知ってますか?被災ローン減免制度|住宅ローン救急センター
・手続きの流れ|一般社団法人 自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関
・積極的な活用を! 被災ローンの減免制度|NHK解説委員室
・自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン|三井住友銀行
・自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン|筑波銀行
・地震保険の保険金は、住宅ローンの返済にも使える!|ARUHIマガジン
・地震保険はどれだけ役立つ?補償内容から活用法までの全知識|LIFULL保険
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