大地震を想定した、賃貸物件ならではのリスク対策【3箇条】

今回ご紹介するテーマは、賃貸物件で暮らす人が知っておきたい「災害時のリスク対策」です。大地震はいつ発生するか分からないものですが、備えあれば患いなし。そこで、一戸建て住宅では想定しにくい二次的災害の危険性から、避難時の注意点まで、賃貸物件ならではの災害時のリスク対策をまとめてみました。賃貸物件の全壊時に役立つ「支援金制度の活用方法」の解説もあるので、心配性の方は必見です!

賃貸物件ならではのリスク対策その1 原状回復が仇になる二次的災害に注意

賃貸物件の契約では、原状回復が障害になり、ネジ止めを用いた「壁に穴を開ける強力な固定」ができない場合もあります。大地震を想定した場合、家具や家電などが固定できていないと、転倒による二次的災害の危険性も視野に入れなくてはなりません。

食器棚の転倒による二次的な災害

大地震でガラス張りの食器棚が揺さぶられると、棚の中にある食器がガラスを突き破る可能性が高くなります。食器棚が倒れて下敷きになるリスクはもちろん、食器や割れたガラスによる二次的災害にも注意しなければなりません。

家電やタンスの転倒による二次的な災害

重量級の家電・家具が転倒して下敷きになると、命の危険性にかかわる場合もあります。大地震のときは、大きな冷蔵庫やタンスなどのそばには近づかないよう意識しておくことが大切です。また、寝ているときに地震が発生した場合、身動きが取りにくいため、寝室にある家具の配置も見直してみましょう。

窓ガラスの損傷による二次的な災害

“窓ガラスの近く”に家電・家具がある場合も注意が必要です。例えば、大地震で冷蔵庫が倒れて窓ガラスが割れる、という二次的災害も想定できます。また、冷蔵庫が窓ガラスから飛び出てしまう可能性もあるので、特に2階以上に住む人は「落下による危険性」にも注意しなければなりません。

賃貸物件ならではのリスク対策その2 

正確な避難所を知る&避難経路では慌てない

賃貸物件で暮らす人たちが「集合住宅の特徴」を知っておくだけで、災害時に役立つことは多くあります。ここでは、地域との交流や住民同士の理解・協力で実現できる、リスク対策を見てみましょう。

災害時には“自分のエリア”の避難所に向かう

賃貸物件のなかでも特にアパートを借りている場合、一戸建て住宅に暮らす人と比べて、地域の自治会とのかかわりが薄い傾向にあります。自治会は地域や地区ごとにルールが異なり、災害時においてもさまざまです。深刻な災害になると避難所での共同生活も想定されることから、最低でも「自分が向かうべき避難所」は把握しておく必要があります。

避難所の代表例として挙げられるのが「小・中学校」です。ところが、集会所や公会堂などを避難所に指定している地域もあります。災害に備えて、自分が住むエリアの範囲を把握し、正確な避難所を知ることが大切です。

避難経路になる共用部は「一極集中」するため慌てずに行動する

賃貸マンションやアパートなどの集合住宅では、共用部を設けてあるのが一般的です。階段やエレベーター、エントランスといったスペースが代表的な共用部で、災害時には避難経路にもなります。しかし災害のとき、集合住宅で暮らす人たちが一斉に避難するとなると、共用部の混雑も想定しておかなければなりません。

エレベーターには収容人数に制限があり、特に高層階での混雑が予想されます。地震後は火災の発生率が高くなることから、煙に巻き込まれないよう注意が必要です。また、階段で混雑すると転倒の危険性もあるので、足元に注意しながら避難する必要があります。いずれにしても、避難時は共用部で一極集中する可能性が高くなるため、慌てず、冷静に行動するよう心がけましょう。

避難ハッチ&隔壁板を利用する

災害時には、避難ハッチ(正式名称:避難器具用ハッチ)を使って避難することもできます。避難ハッチとは、主に複数階の集合住宅に設置されている、共用部とは別の避難経路です。一般的に共用廊下とは反対側の「ベランダやバルコニー(以下:ベランダで統一)」などに設置されていることが多く、床下収納のようにフタが開閉できるようにつくられています。フタを開けると、折り畳まれたハシゴが下のベランダまでのびる、というタイプが主流です。

避難ハッチは、集合住宅の規模によって設置基準が異なるため、各部屋に必ず設置されているとは限りません。ベランダに避難ハッチがない場合は、避難ハッチがある部屋を把握しておくことが大切です。また、ベランダを避難経路としている集合住宅では、一般的に隣室との境に隔壁板が設置されています。避難ハッチがある部屋まで避難することを想定し、事前に隔壁板の使い方も確認しておきましょう。

賃貸物件ならではのリスク対策その3 被災者生活再建支援制度の活用

地震で賃貸物件が全壊した場合、オーナーとの賃貸契約は終了する、という契約を結ぶのが一般的です。住む場所が失われるということは、次なる住居を確保する必要があり、資金もかかります。そんなとき活用できるのが、被災者生活再建支援制度です。

被災者生活再建支援制度は賃貸住宅に住む人も対象

自然災害に被災したことで、住宅の全壊や解体などを余儀なくされた世帯に対して、支援金を支給するのが、被災者生活再建支援制度です。その対象は、自然災害で住宅が全壊した被害世帯数が、市町村では10世帯以上、都道府県では100世帯以上など、範囲によって異なります。また、住宅の全壊をはじめ、半壊による解体や大規模な補修が必要、といった被災世帯も対象になります。つまり、被災者生活再建支援制度は、市町村や都道府県の住宅全壊被害世帯数が一定以上を前提とし、そのうえで住宅の全壊や半壊などの自然災害を受けた世帯に支援金が支給される、という仕組みです。住宅の種類による対象の制限はないので、賃貸住宅に住む人も被災者生活再建支援制度を利用できます。

被災者生活再建支援金の支給額

被災者生活再建支援制度の支援金は2種類あります。1つは住宅の被害レベルに応じて支給する「基礎支援金」で、もう1つは住宅の再建方法に応じて支給する「加算支援金」です。基礎支援金では、住宅の全壊をはじめとする「4つの被害レベル」によって支給額が異なります。一方の加算支援金は、「住宅の建設および購入」「住宅の補修」「公営住宅以外の貸借」という3ケースに分かれ、基礎支援金と組み合わせることも可能です。

【基礎支援金の支給額】

・住宅の全壊:100万円が支給される

・住宅の半壊による解体:100万円が支給される

・災害による危険で居住不能のため長期避難が必要:100万円が支給される

・大規模半壊:50万円が支給される

【加算支援金の支給額】

・住宅の建設および購入:200万円が支給される

・住宅の補修:100万円が支給される

・公営住宅以外の貸借:50万円が支給される

※単数世帯(世帯人数が1人の場合)は各該当の3/4の金額が支給されます。

例)住宅全壊(基礎支援金)の支給額は75万円、住宅の建設および購入(加算支援金)の支給額は150万円です。

被災者生活再建支援制度の申請方法

居住する地域が「被災者生活再建支援制度」の対象である場合は、市区町村から被災世帯あてに「り災証明書」が交付されます。被災世帯は、り災証明書や支援金支給申請書などを揃えて、市区町村に提出します。申請の手続きは以上ですが、申請期間が決められているので、注意しなければなりません。申請期間は基礎支援金が災害発生から13ヶ月以内、加算支援金が災害発生から37ヶ月以内です。申請に必要な書類は、各市区町村のホームページから確認できます。

災害のリスク対策は「視野を広げて掘り下げる」のがポイント!

災害に対する高い意識を持ち、対策を講じている人も多い時代ですが、やはり油断は禁物です。今回ご紹介した3箇条以外には、夏場と冬場の暑さ寒さ対策だったり、地域性による寒暖の違いだったりも考えられるので、視野を広げつつ掘り下げてみるとよいかもしれません。

参考:

・地震対策に必須の建造物の耐震化と家具固定。でも賃貸物件では家具の固定ができない?|リスク対策.com

・危険な家具の地震対策を紹介|JBR生活救急グループ ガラスの救急車

・避難所となった学校施設の利用状況と課題|文部科学省(PDF)

・賃貸物件での自治会への加入は必要なのか|賃貸選び方.com

・共同住宅等に係る消防用設備等の技術上の基準の特例の細目について|消防庁(PDF)

・避難器具用ハッチの基準について|消防庁(PDF)

・被災者生活再建支援制度の概要|防災情報のページ 内閣府(PDF)

・支援金支給概要|公益財団法人 都道府県会館

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