欠陥住宅に関するニュースが後を絶たず、住宅購入予定者の不安は消えません。特に耐震性は居住者の命にかかわる可能性が高いだけに、その不安は深刻といえるでしょう。もし、あなたが買った住宅が欠陥住宅だったら、そのショックは相当なものになるでしょう。では、どうすれば欠陥住宅か否かの見分けができるのでしょうか。
欠陥住宅とは
欠陥住宅とは、一般に「通常有すべき安全性を欠いた住宅」とされています。「安全性」とは「住宅居住者の生命・身体・健康」に対する安全性です。制度的には「国民の生命、健康、財産の保護を図る」ために制定された建築基準法、日本建築学会の「標準工事仕様書」、住宅金融支援機構の「技術基準」などに合致しない住宅は、「安全性を欠いた住宅」とみなされます。したがって、耐震・耐火性、躯体(くたい)の耐久性なども「安全性」に含まれるようです。
ところで、欠陥住宅と混同されやすいのが「住宅の不具合」です。住宅の不具合とは、一般に、以下のものを指し、欠陥住宅とは明確に異なります。
・内壁のひび割れ、クロスはがれ
・経年劣化による建具のゆがみ
要は、簡単な補修で原状回復できるものが「住宅の不具合」であり、雨漏り、床の著しい傾斜、筋かい不足など「住宅にあってはならない致命的な不具合」が欠陥住宅とされています。
また、欠陥住宅に住んでしまうと、次のような被害にさらされる可能性があります。
・日常生活の場が脅かされる
住宅は日常生活の基盤であり、明日への活力を回復する場、家族の団欒と子供を育てる場、癒しの場などの特性を有しています。欠陥住宅はこのような生活基盤を脅かすものであり、居住者の人生を狂わしかねない可能性も秘めています。
・金銭的被害が甚大
住宅の購入価格は数千万円以上が通例であり、購入者の大半は10年以上の長期住宅ローンを組み、毎月コツコツと返済しています。その住宅が欠陥住宅だった場合の金銭的被害は計り知れないでしょう。
・被害は精神面にも
欠陥住宅の直接的被害は金銭面だけではなく、精神的苦痛も与えます。その結果、居住者にノイローゼ、体調不良などを発症させ、生命・身体・健康の安全性を驚かす要因ともなります。
欠陥住宅の種類と立証方法
欠陥住宅の種類は「法令違反建築」と「契約違反建築」に大別されます。裁判沙汰に発展する欠陥住宅紛争において、どちらの立証が困難かといえば契約違反建築です。
法令は当事者が任意に改変できない基準なので、法令違反建築は容易に立証できます。対して、契約は当事者の合意で任意に決定できるので、契約のどの事項が契約違反建築に該当するのかの解釈が買主と売主の間で分かれるので、立証が困難になります。
とはいえ、立証は絶望的なものではなく、次のような建物検査結果が契約違反建築の立証の目安になるといわれています。
1.基礎……基礎の沈下、基礎のひび割れ・欠損等
2.床……床の傾斜・たわみ、床鳴り・きしみ等
3.外壁……外壁の傾斜・ひび割れ・欠損、外壁仕上げ材のはがれ・浮き等
4.内装……内装の傾斜、内装仕上げ材のひび割れ・はがれ等
5.天井……天井のたわみ
6.屋根……屋根の変形(はがれ、ずれ、浮き等)
7.室内……雨漏り・漏水、給排水管からの漏水、排水管の排水不良、結露、断熱不良、建具の開閉不良等
これらの「欠陥」を紛争の第三者であるインスペクターに検査してもらい、その検査結果を示せば立証の可能性が高まるといわれています。
欠陥住宅の対処法
購入した住宅が不幸にして欠陥住宅だった場合は、次のような対処が有効といわれています。
注文住宅の場合
注文住宅を購入して欠陥を見つけた場合は、契約書記載の瑕疵(かし)担保責任(※)の期間と適用範囲を確認し、瑕疵(欠陥)がどのような状態で発生しているのかを書面に記し、契約当事者(売主、不動産仲介会社等)に補修を要求します。
建売住宅の場合
建売住宅の場合は、一般に住宅販売会社が交渉相手になります。したがって、建売住宅の引渡し後に欠陥を見つけたら、購入先の住宅販売会社に欠陥の補修を要求します。住宅販売会社が補修要求に応じない場合は、前述のインスペクターの検査結果を添えて、「宅地建物取引業保証協会」(各自治体に設立されている)に苦情申立てをしましょう。
同協会は欠陥住宅問題が発生した際の住宅購入者と住宅販売会社との調停、問題解決不能だった場合の住宅購入者への弁済などの業務を行っている公益社団法人です。
分譲マンションの場合
分譲マンションで欠陥が見つかった場合、宅建業法により物件引渡しから2年以内は「瑕疵は売主負担において修繕しなければならない」と定められています。すなわち、物件引渡しから2年以内であれば、無条件で欠陥補修を要求できます。
また「品確法」(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では「住宅の構造上の主要部分または雨漏り部分については、引渡しから10年以内であれば売主の負担で修繕しなければならない」と定めています。よって、物件引渡しから2年経過後に欠陥を見つけた場合は、品確法により対処できます。
※「住宅瑕疵担保責任」……「住宅瑕疵担保履行法」に基づく住宅品質保証制度の1つ。新築住宅について、構造部分と雨漏り防止部分に10年間の品質保証を売主に義務付けている。
一般消費者でもできる欠陥住宅の見分け方
欠陥住宅というと、手抜き工事をイメージしがちです。ところが、意図的な手抜き工事による欠陥住宅は意外に少なく、要因は以下のように多岐にわたります。
・工期に余裕がなかったためのコンクリート・モルタルの養生不足
・経験不足による施工不良
・経験不足による構造計算ミス
・木材の乾燥不足による接合部のズレ
そのため、これら幅広い要因が欠陥住宅を根絶できない背景といわれています。
建築知識の少ない一般消費者が、購入候補物件が欠陥住宅か否かを見分けやすいのは内覧時で、一般に次のような見分け方とされています。
マンションの場合
・ピンポン玉やゴルフボールを床の真ん中に置いてみる……玉が転がれば床が傾斜している可能性がある
・水の入ったコップを床の真ん中に置いてみる……水面の揺れが続くようなら、交通振動や工事振動に弱く、やがて耐震性が低下する可能性がある
・床を隅々まで歩いてみる……不自然な沈みや感触があれば、基礎が陥没しているか腐敗している可能性がある
・部屋の隅、壁のクロス、木製建具などにカビ・黒ずみ・水の染みがないか……該当箇所があれば雨漏り・水漏れ、結露の可能性がある
・扉、障子、窓などの建具がスムーズに開閉するか……スムーズに開閉しない場合は、建物全体のゆがみ・取り付け不良の可能性がある
・障子や窓を閉め切ってみる……薬品臭やカビ臭さなど異臭がすればシックハウス、見えない部分での腐食・カビ繁殖などの可能性がある
戸建て住宅の場合
戸建て住宅の場合は上記のチェックに加え、基礎に亀裂が走っていないか、基礎に水溜りができていないかを、ぜひチェックしたいところです。
賢い消費者の「欠陥住宅掴み予防策」とは?
近年に販売された新築マンションや建売住宅で発覚する欠陥住宅は、大半が契約違反建築によるものといわれています。
契約違反建築の場合、弁償から逃れたいと考える売主は「買主が契約書をよく読んでいなかった、欠陥関係事項を読み飛ばしていた、欠陥に対する解釈が違う」などさまざまな言い訳をします。これに対する反論は水掛け論に終わるのが通例のようです。しかし、欠陥の事実を客観的に示せば、契約書を盾にした売主の言い訳は通用しないでしょう。
そのためにも、契約締結前にホームインスペクションを利用するのが、賢い消費者の「欠陥住宅掴み予防策」といえるでしょう。その際は、建築構造設計と耐震性・建物検査の専門家である耐震診断サービス会社に相談するとよいでしょう。
参考:
・欠陥住宅とは|欠陥住宅全国ネット
・欠陥住宅を掴んでしまったら……|建築Gメンの会
・新築住宅、中古住宅の欠陥に対する売主の責任は?|スマートおうち探し
・もしも購入した住まいが欠陥だった場合……知っておきたい「瑕疵担保責任」とは何||住まいのお役立ち情報
・住宅瑕疵担保履行法について|住宅瑕疵担保責任保険協会
・購入しようとする住宅が欠陥かどうか、どう見分ける?|住まいのお役立ち情報
・内覧時に欠陥住宅を見抜くポイントとは|TATE-MAGA
・マンションの欠陥構造を見極める!||ひかりノベ
・欠陥住宅とはなにか?|消費者のための住宅購入ガイド
0コメント