建物の耐震対策で、災害リスクは回避できる!

災害は想定できるけれど、具体的な対策がわからないという人は、意外に多いのではないでしょうか。災害対策の目的は、人命を優先するとともに災害リスクを最小限に食い止めることです。とはいえ、すべての災害から身を守れるほど、災害は甘いものではありません。ただ、対策次第でリスクを回避できる災害もあります。そこで、耐震補強や家具の固定などの対策が立てられる「建物」に着目。今回は、住宅災害の種類について触れたうえで、災害時と事前にできる災害対策について紹介します。


災害対策を知る前に「住宅災害の種類」を知ろう!

住宅災害の種類は、大きく分けて4つです。住宅災害にまつわる主なケースを交えてみていきましょう。


自然災害

一口に自然災害といっても諸説あります。住宅災害に関係する「被災者生活再建支援制度」によると、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などが、支援の対象になる自然災害です。


気象災害

雷や雹(ひょう)をはじめとする、気象現象によって生じる災害が気象災害です。住宅災害では、落雷による停電、雹が屋根を貫通するといったケースがあります。


地盤災害

地盤沈下や地すべりなど、地形に関係する災害が地盤災害です。また、地震に伴う液状化、豪雨による土砂災害全般を含める場合もあります。


人為災害

人為災害の範囲は幅広いものの、住宅災害における人為災害は火災や浸水が一般的です。例えば、調理中のミスやたばこの不始末による火災、浴室のお湯があふれて浸水するなどがあげられます。


災害時の応急対策は人命優先+二次災害を防ぐ

災害時や災害直後は、身の安全を確保すると同時に、避難経路で想定される地震火災や液状化などの「二次災害」にも注意する必要があります。


災害時は避難が最優先

地震による住宅災害では、建物の倒壊や家具類の転倒・落下などから一時的に身を守り、避難経路を確保することが最優先です。また、避難=すぐ逃げることではなく「災害を避ける」ことなので、闇雲に地域の緊急避難場所へ向かうのは、時として大きなリスクを伴います。そのため、普段から「住宅内での避難場所」を意識しておくようにしましょう。その際、キッチン・窓の周辺・浴室・1階は、二次災害のリスクが高くなる傾向にあるので、避けるべき場所といわれています。


身の安全が確保できたら二次災害を防ぐ

地震で怖いのが二次災害です。そのなかでも地震火災は代表格で、1995年に発生した阪神・淡路大震災では約7,000棟が全焼し、2011年の東日本大震災においても多くの犠牲者を出しています。そうした地震火災を防ぐためには、ガスコンロの元栓を閉める、暖房器具の運転を止める、電源ブレーカーを落とすなどの対応が基本です。特に、東日本大震災では、出火原因の「約54%が電気関係によるもの」というデータも出ています。災害時には電気を意識することが重要です。


避難時は二次災害に巻き込まれないように注意する

地震火災が発生した場合、炎に巻き込まれないことはもちろん、煙にも注意しなければなりません。また、室内から外に避難する際は、延焼状況を確認しながら進むことが大切です。地震火災以外には、津波やガス漏れ、液状化現象といった二次災害に注意しましょう。


事前にできる災害対策

ここでは、住宅の耐震性、家具類の転倒防止、避難ルートの考え方という3つの災害対策をみていきましょう。


住宅の耐震性と向き合う

地震による住宅災害で、最も気をつけたいのが「建物の倒壊」です。特に大地震になるほど全壊・半壊の被害が多くなる傾向にあり、阪神・淡路大震災では「合計約25万棟の住宅が倒壊被害を受けた」というデータも出ています。そうした経緯があるなか、現在は住宅の耐震性も数値化され、その代表格が耐震等級です。3段階に設定されている耐震等級は、耐震等級1が新耐震基準を満たし、耐震等級2がその1.25倍の強度をもちます。耐震等級3は、耐震等級1=新耐震基準の1.5倍の強度です。なお、新耐震基準では、震度6強~震度7程度の大地震でも倒壊しないことを前提としています。一方、耐震等級は任意制度であるため、等級認定を受けてない住宅も少なくありません。そうしたときは、耐震の専門家に耐震診断を依頼し、マイホームの現状を把握しておくことが大切です。マイホームの耐震強度がIs値(構造耐震指標。木造ではIw値)という数値であらわされることで、災害に備えた対策も明確になります。


室内の家具や家電を固定する

大地震が発生した際は、建物の倒壊被害だけでなく、建物内における家具類の転倒による被害にも注意が必要です。阪神・淡路大震災では、住宅の全半壊被害にはあわなかったものの、約6割の部屋で家具類が転倒・移動したというデータも出ています。特に、本棚・食器棚・タンスの被害が顕著だったとされているため、固定や配置を変えるなど、転倒防止対策を実践することがリスク回避の近道といえるでしょう。


避難や避難生活に備えた準備をしておく

地震による住宅災害では、二次災害に注意しながら、最短ルートで緊急避難場所へ向かうことも大切です。とはいえ、地震直後は混雑やパニックなどから、日常で想定していたルートを通れないケースも考えられます。なので、1本のルートにとどまらず、前もってルートの本数を増やしておくことが重要です。日常では遠いと感じるルートでも、災害時には安全なルートであることが優先されます。また、日ごろから非常食や飲料水、携帯ラジオ、貴重品、医薬品、衣類などを用意してひとつにまとめておくと、避難生活の際に役立ちます。ただ、せっかく用意したのに、災害時に持ち運びできないとなると本末転倒です。あらかじめ置き場所を決めておくとよいでしょう。


対策次第でリスク回避できる災害もある!

建物内で起こり得る、地震を想定した災害対策ができていれば、災害リスクは最小限に食い止められます。また、防ぎようのない災害の方が多いものの、対策次第でリスクを回避できる災害もあることを理解しておくのが大切です。一方、耐震等級にみる耐震構造を意識すれば、地震はもちろん、積雪災害の対策にもつながります。災害時に備えて、耐震診断を検討することも災害リスクの回避につながる有効策のひとつです。


参考:

・被災者生活再建支援制度(PDF)|公益財団法人都道府県会館 被災者生活再建支援基金部

・気象災害に関する用語|気象庁

・災害と地形(PDF)|国土地理院

・早分かり!耐震性の目安|SUUMO

・阪神・淡路大震災について(確定報)(PDF)|総務省消防庁

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