日常に潜む『構造』-蜘蛛の巣-

-蜘蛛の巣を本気で考えてみた-


こんにちは、ケンです。


普段の何気ない日常にも『構造』が潜んでいます。

みなさんは、きちんとお掃除をされていますか。天井の隅に蜘蛛の巣が張られていませんか。


今回は、『蜘蛛の巣』のお話です。

(『蜘蛛の巣』の図)

蜘蛛の巣を構成する糸は、材料の強度が鋼鉄よりも強いとされています。

それでも、風などの必要以上の力がかかった時には、巣が破損することがあります。


そのとき蜘蛛は、巣の横糸を切ることによって力を逃がし、巣全体の崩壊を防いでいます。

一つでも材料が壊れると不安になりますが、逆に巣を修復しなくてもよい強度にしようと思うと、必要以上の労力・手間が掛かってしまいます。


蜘蛛は、巣の崩壊と巣を構築する労力を天秤にかけて、バランスをとりながら巣を作っているのです。


これは、私たちが取り組んでいる『構造設計』にも当てはまります。私たちは、主に地震に対して建築物が安全であることを確かめています。

もちろん、できるだけ大きな地震を想定して、建物の安全性を確かめる方がより間違いがありません。


ただし、現実はそうではありません。そこには、お金との兼合いが発生します。地震に安全な建物になればなるほど、部材が大きくなり、お金がかかります。

また、本当に来るかどうかわからない地震に対して、そこまでの装備が本当に必要かどうかという問題もあります。


そこで私たちは、蜘蛛と同じようにバランスを取り、とても大きい地震に対して、『一部の部材は破損しても、建物全体は崩壊しない』という設計方針を立てることがあります。

そうすることで、人命を守ることを優先しながら、建設費などの経済的な問題もクリアできます。


ひとえに構造設計者といっても、ただ地震に安全な建物を作ればいいというわけではありません。私たちは、お客様の状況に応じて、理想と現実のバランスを取りながら設計していく必要もあるのです。


(参考文献-フライ=オットー他著 岩村和夫訳(1986)『自然な構造体』鹿島出版会)

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