シドニー オペラハウス② ~幾何学にのらない曲線~

こんにちは、ケンです。

1958年、シドニー港に突き出す岬の先端にオペラハウスを建設する計画が立ちあがり、国際コンペが実施されました。世界から200件を超える応募が集まり、国際的にはまったく無名のデンマーク人建築家ヨーン・ウッツォンが選ばれました。ウッツォンはフリーハンドで外観スケッチを描き、風をはらんで重なり合うヨットの帆ような、そのなめらかで優雅な曲線は、審査員のみならず、当時の世界中の人々を魅了しました。

しかし、このスケッチは、解析することもできなければ、つくることも出来ない、言ってみれば空想上の産物でありました。薄い曲面は、鉄筋コンクリートのシェルとして建築的に実現されるわけですが、この時、曲面に面外の曲げが発生すると、リブや折版構造等による補強が必要になります。余計な補強のない、なめらかな曲面とする場合は、曲げ応力をほとんど負担出来ないので、曲面に沿った軸力のみで力の流れを伝達できる適切な形状を選ぶことが重要です。

「シェルの内面を卵の殻のようにスムーズにしたい」というウッツォンの意向が、構造設計者であるオヴ・アラップと彼が代表を務めるアラップ社を3年以上にわたって苦しめることになります。

まずやらなければならなかったのは、フリーハンドで描かれた曲線を数式で表現できる幾何学形状に置き換えることでした。PCも計算プログラムも整っていない当時、複雑な曲線を扱うには、高度な数学的理論を駆使して手計算で解かねばなりませんでした。そのために、なんとしても幾何学形状に置き換える必要がありました。

まずは、ウッツォンが描いた曲線が放物線に近いことから、放物線案をもとに検討が始まりました。形状を数式で表現出来さえすれば、計算が可能になります。しかし、事はそれほど簡単な話ではありませんでした。

(次回につづく)

taishin nippon

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