こんにちは、ケンです。
前回は、連続的に曲率が変化する曲面の施工が、実現不可能であること。それに対して、オペラハウスの複雑な屋根曲面をひとつの球形の一部と見立てて、 全ての曲面をひとつの球の曲面から切り出すという、ウッツォンのアイデアをご紹介しました。
ウッツォンはコンペを勝ち獲ったものの、これほどの巨大なプロジェクトを担当した経験もなく、事務所の体制も整っていませんでした。オペラハウスの施工は、設計が終わる前からスタートし、現場は刻一刻と進むなか、それでも実現にこぎつけられたのは、構造設計者アラップのマネージメント能力によるところが大きかったといわれています。
シドニーオペラハウスは、当初4年で完成するはずだったものが、14年かかりました。建設も半ばの1966年には、工事の遅れの責任を取るかたちで、ウッツォンが設計者を解任されるという衝撃的な事件もありました。しかし、ウッツォンが解任されてもアラップ社は引き続きプロジェクトに残りました。当時の関係者が、アラップ社抜きでは、工事を完成させることが出来ないと考えていた証左ではないでしょうか。
構造設計事務所アラップ社がオペラハウスの構造設計に費やした時間は、37万5000時間に及んだそうです。しかも、携わったのは、当時、超一流のエンジニアばかりです。シドニーオペラハウスは、2007年、 世界遺産に登録されるわけですが、その選考基準において、「建築形態」、「水景上の優れた立体芸術」、「世界的に著名な偶像的建築」等の言葉と並んで、「構造設計」が挙げられており、アラップ社の貢献について言及されています。
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