2017.07.27 05:07建物規模と設計ルート今回は、建物規模と設計ルートについてです。設計ルートとは、構造計算を行う際の道程です。まずは、建物規模と採用できる設計ルートの区分になります。○ルート1強度型:建物を変形しにくくして、地震に対して耐える ≒ 満員電車の中で踏ん張るイメージ木造建物高さ≦13m,軒の高さ≦9mS造建物高さ≦13m,軒の高さ≦9m,+柱スパン≦6m,階数≦3,延べ面積≦500㎡ → ルート1ー1+柱スパン≦12m,階数≦2,面積≦500㎡,平面的バランスが良い(偏心率≦0.15) → ルート1ー2+柱スパン≦12m,階数≦1,面積≦3000㎡,平面的バランスが良い(偏心率≦0.15) → ルート1ー2RC造(*1)建物高さ≦20m,規定量の耐震壁(*2)がある○ルート2S造...
2017.07.26 08:30耐震改修とは②前回は、耐震改修のうち「強度型」のお話をしました。今回は、「靭性型」と「その他」のお話です。②「靭性型」(靭性抵抗型補強)粘り強い性質を持った鉄筋や鉄板などを用い、しなやかさを向上させる補強方法です。例)鉄筋コンクリートの柱に薄い鉄板を巻き、隙間にコンクリートを流し込む方法があります。また、同じように鉄骨の柱・梁の側面に鉄板を溶接して、厚みを厚くする方法があります。
2017.07.26 08:26耐震改修とは①耐震診断の結果より、耐震性能が不足する建物は何らかの補強を行い、性能を向上させる必要があります。この補強工事等を耐震改修と言います。では、耐震改修にはどのような工事があるのかをご説明しますが、その前に「建物はどうやって地震に耐えるのか」をおさらいしておきます。すでにお読みになった方はもうお分かりかと思います。まだの方は、先にお読みになって下さい。耐震性とは大きく分けて「強度型」と「靭性型」の2種類があるとお話しました。
2017.07.26 08:16そして耐震診断へ③前回は、構造種別(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造)毎の指標に突っ込み入れたところで、新しい言葉「第○次診断」が出てきました。今回は、建物の診断方法をご説明します。建物の診断方法には、グレードに応じてメニューが用意されています。体の健康状態が気になった時も「ちょっと心配だから看てもらおうか」というものから、「あなたは重病の恐れがありますので、精密検査を受けてください」というものまで、幅広く診断項目がありますね。それと同じです。診断のグレードを上げると、調査すべき項目も当然増えてきます。そうなると、費用も同様にかさみます。ですが、その分、より一層詳しい診断ができるのです。過剰な検査や調査は必要ないと思いますが、少しでも重病の可能性がある場合は、グレードを...
2017.07.26 08:14そして耐震診断へ②前回は、建物の安全性を指標という数値で判定することをお話しました。今回は、どのくらいの数値であれば「安全」と言えるの?をお話します。広く共有されているのが、一般財団法人 日本建築防災協会が示す指標です。それでは、順番に見ていきましょう。木造(上部構造評点)1.5以上 …倒壊しない。1.0以上~1.5未満…一応倒壊しない。0.7以上~1.0未満…倒壊する可能性がある。0.7未満 …倒壊する可能性が高い。鉄骨造(Is値、q値)Is≧0.6かつq≧1.0 …倒壊、崩壊の危険性が低いその他 …倒壊、崩壊の危険性があるIs<0.3またはq<0.5 …倒壊、崩壊の危険性が高い鉄筋コンクリート造(Is値)Is≧Iso ...
2017.07.26 08:13そして耐震診断へ①「耐震診断」という言葉、いろいろなサイトでも目にすることがあると思います。「診断」という言葉通り、建物の健康状態を判定することを指します。建物の診断に取り掛かる前に、調査を行う必要があります。「まずは建物調査から」でも、ご紹介しましたが、一口に調査と言っても目的によって、調査内容は変わってきます。建物の耐震性を知りたいわけですから、建物の血管(設備配管)や皮膚(外壁)だけではなく、骨格(構造体)を調べなければいけません。(詳しくは「まずは建物調査から」)調査が終わって、必要な情報が揃うと、いよいよ耐震診断を行います。ここからは少し専門領域に入りますが、眠たくならないよう、かいつまんでご紹介したいと思います。耐震診断の特徴は、調査で得られた情報を基に、そ...
2017.07.26 08:12まずは建物調査から「建物調査」という言葉は、一般の方にはあまり知られていないサービスかと思います。ここでは、どのような調査を行うのかをご説明します。人もモノも、時間の経過とともに生まれた当初の状態から変化していきます。建物は、工事中に変更が行われて図面通りに建物が工事されていなかったり、完成後でも増改築や修繕が行われることで、図面と異なることがあります。また、柱や梁といった部材の劣化や損傷も見られるのです。建物の現在の状態を把握するためには、実際に調査を行い、現況を正しく評価する必要があるのです。と、少し専門的なお話になってしまいましたので、イメージしやすい例えでご説明します。①「建物調査」と「耐震診断」みなさんの中で、健康診断を受診されたご経験がある方は、思い出してみ...
2017.07.26 08:06昭和56年以前の建物は要注意!!②前回は、「数十年に1回以上」遭遇すると思われる【中地震】と「数百年に1回以上」遭遇するかも知れない【大地震】の2段階(1次設計、2次設計)で建物の安全性を確認する「構造計算」のお話をしました。今回は、2階建て木造住宅などの耐震性の確認のお話をします。2階建て木造住宅などの耐震性の確認は「壁量計算」と呼ばれます。床面積に応じて一定以上の筋かい等の耐力壁を設けるように決められた規定に沿った検討です。1981年(昭和56年)以降は、必要壁量や耐力壁の壁倍率が大幅に見直されました。その後、兵庫県南部沖地震(1995年)に被害の大きかった木造住宅には「偏心率(バランス)が悪い」、「施工時の品質の管理がされてない」、「腐朽・蟻害がある」といった特徴が著しかったこと...
2017.07.26 08:03知られざる耐震の歴史今回は、堅いお話です。学生時代に歴史が苦手だった方も、お付き合いください。歴史は未来を考える材料になります。現在、私たちは当たり前のように、法律に従って建物を建てていますが、今に至るまでにどのような経緯があったのかを知ることで、将来の変化への対応を考えたいと思います。日本の耐震設計の歴史は1891年の濃尾地震から始まりました。当時は、S・RCの建物が少なく、木造・レンガ造の建物が主流であり、耐震設計が考慮されていないこれらの建物は被害が甚大でした。この反省から、耐震設計という考えが生まれます。また、明治政府という統一的な行政が、日本に生まれていたことも建物への意識を向ける余裕を生み出していたと思います。その後、大きな地震に見舞われる度に耐震設計法が見直...
2017.07.26 07:36建物はどのようにして地震に耐えるのか①建物が地震に耐える方法は、大きく分けて二つあります。その抵抗の仕方から「強度型」と「靭性型」と言われています。その前に、「地震が起こると建物がどのようになるのか?」をご説明します。すごく簡単なことですが、地震が発生するとまず、地面が揺れ、その揺れ=振動が建物に伝わり、建物が揺さぶられます。揺れ方は建物の形状によります。高層ビル等の細長い建物は、大きく、ゆったりと揺れ、戸建て住宅等の背の低い建物は、小さく小刻みに揺れます。建築設計の分野では、揺れ方を理解するために、建物を簡単な形に置き換えて考えます。このような作業を「モデル化」と言いますが、ここでは「串」と「団子」を使って、説明します。建物を一本の「串」と見なします。建物には、床や屋根があり、床には家具...
2017.07.14 03:41昭和56年以前の建物は要注意!!①「知られざる耐震の歴史」から、我々の先輩方が約90年の間に地震罹災→法律改正を何度も繰り返しながら、耐震基準と耐震技術を向上させてきたことが分かったかと思います。その中でも、1948年の福井地震の2年後に制定された『建築基準法』(1950年)が現在も施行されています。ちなみに、「しこう」と読みます。その後、1978年の宮城沖地震の3年後にその『建築基準法』(1981年6月)が改正されています。1950年の制定から1981年6月の改正までの間、想定していた地震は【中地震(震度5強)】までで、経験則から【震度6以上の大地震】でも『安全であろう』と想定されてきました。しかし、宮城沖地震を罹災したことで、「数十年に1回以上」遭遇すると思われる【中地震】と「数百...