空き家オーナーなら知っておきたい、耐震対策の2大ポイント!

かつての空き家は「一律で固定資産税が優遇される」といわれていましたが、新しい法律ができたことにより“一部の税制優遇は廃止”されています。そうすると、「いったい何が空き家のメリットなの?」と思うオーナーも多いはず。ところが、法律が制定された理由には「建物の老朽化」が関係しているため、耐震対策を万全にしておけば、以前と同じ税制優遇を受けられます。そこで今回は、空き家の現状に触れながら、空き家オーナーにとって役立つ「2つの耐震対策」をご紹介します。

空き家と耐震対策は切っても切れない間柄

少子高齢化と供給過多で、今もなお増え続けているのが空き家問題です。まずは、全国の「空き家の現状」と「空き家のリスク」を見てみましょう。

全国の住宅の約13%が空き家

2013年に総務省が行った「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の戸数は820万戸。これは1973年以降の調査で過去最多を記録し、年々、右肩上がりの傾向です。また、全国の住宅総数は6,063万戸(2013年時点)なので、空き家率に換算すると13.5%になります。つまり、日本の10件に1件以上が空き家といえます。

倒壊のおそれがある空き家は税制優遇を受けられない

従来の空き家は、一律で固定資産税が減額される税制優遇措置がとられていました。しかし、2015年2月に施行された新法律「空家等対策の推進に関する特別措置法」における特定空家等に認定されると、税制優遇は受けられなくなります。この法律における特定空家等は、「空家を放置することで、倒壊の危険性や衛生的に有害になる可能性があるなどの理由から不適切の状態」と定義されています。特定空家等に認定された場合、従来の固定資産税の減額対象となる1/6(200㎡以下の住宅用地)の控除がなくなり、今までより多く納税しなくてはなりません。また、200㎡以上で適用されていた1/3という減税も廃止されています。

新耐震基準に適合しない空き家は「耐震補強工事」をする必要性も

空家等対策の推進に関する特別措置法は、税制優遇の廃止だけでなく、空き家の安全性にも着目しています。そうしたことから、1981年以前に建てられた新耐震基準を満たしていない空き家は、行政代執行の対象になります。つまり、行政から倒壊の可能性が高いと判定された空き家は、「耐震補強工事をする」といった策で強制的にリスクを改善しなければならない、ということです。

空き家オーナーがすべき最初のポイントは「耐震診断」からの現状把握

空き家のリスクを考えると深刻ですが、対策手段も存在します。ただ、対策を実行する際には、下調べをして現状を把握することが大切です。ここでは、空き家を災害の危険から守るための耐震診断について見てみましょう。

耐震診断とは?

建物には安全性が求められ、その安全性はいくつかの項目に分けられます。耐震診断は、特に「地震などの災害から建物を守る際の安全性」に欠かせない手段の1つです。また、一般財団法人・日本建築防災協会が新耐震基準の検証による「構造耐震指標=IS値」を示したことで、耐震診断は数値化され、より明確になっています。木造住宅でのIS値は以下の通りです。

・IS値1.5以上:倒壊しない

・IS値1.0以上:一応、倒壊しない

・IS値0.7以上~1.0未満:倒壊する可能性がある

・IS値0.7未満:倒壊する可能性が高い

耐震診断費用について

IS値によって判定される耐震診断ですが、その費用は木造住宅の場合、1件の依頼につき「20万円」といわれています。ただ、建物の規模や施工業者によって変わってくるため、20万円はあくまで目安額です。また、耐震診断後の改修工事を前提とした施工業者では、耐震診断費用を5万円くらいに設定し、改修工事の際に残りの金額を回収する、というケースもあります。

耐震診断をすれば地方自治体から補助金が支給される

空き家の老朽化が心配で、まずは耐震診断からと考えている場合、その費用を補助してくれる制度があります。対象や条件は、新耐震基準ではない建物をはじめ、さまざまです。地方自治体が実施しているので、補助金の詳細を知りたい場合は、空き家の住所がある市区町村に連絡してみるとよいでしょう。

空き家の耐震性が低い場合は「優遇税制&補助金」適用の耐震工事がオススメ!

耐震性の低い空き家だと、抱えるリスクも大きくなるものです。しかし、耐震を意識した建て替えや住宅改修ができれば、優遇税制や補助金の支給といったメリットが受けられます。さらに、解体費用を半額にすることも可能です。

新築を検討するなら長期優良住宅が狙い目

長く住める家を目的とし、耐震性をはじめとする「9つの項目」をクリアすると認定されるのが、長期優良住宅です。9つの項目には、耐震等級が2以上、省エネルギー対策等級が4などの基準が設けられています。長期優良住宅として認定されることで、固定資産税や不動産取得税といった税制優遇が受けられます。

長期優良住宅に認定されていない戸建ての一般住宅を新築で購入した場合、固定資産税の減額措置(税額が半減)は3年間です。それが長期優良住宅に認定されれば、減額措置の期間も5年間に引き上げられます。また、空き家をエコ住宅に建て替える際、住宅性能表示制度と建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の各基準を満たしたうえで、長期優良住宅の認定を受ければ「従来のエコ住宅の補助額に10万円が加算」されるためお得です。ただ、BELSにはランクがあり、最上級の5つ星の場合、10万円は加算されません。

耐震補強をすれば補助金がもらえる

耐震性の低い空き家でも、構造耐震指標をアップするための「耐震補強改修工事」をすれば、地方自治体から補助金が支給されます。例えば、構造耐震指標(IS値)が0.3以上加算し、1.0以上にアップした場合は90万円、0.7未満から、0.7以上1.0未満にアップしたら40万円など、その条件はさまざまです。また、地方自治体によって耐震構造の評価基準は異なり、支給額も違うので、事前に連絡して確認しておくとよいでしょう。

解体は費用もかかるが補助制度もある

空き家を解体するとなれば、一般的に「100~200万円の解体費用を要する」といわれていますが、地方自治体では老朽化対策事業を展開している市区町村もあります。対象や条件、補助の範囲はさまざまですが、解体工事にかかった費用を半額にする、というのが目安です。

空き家バンクの活用を視野に入れた専門家への相談もオススメ!

今回ご紹介した耐震対策が実現できれば、固定資産税の税制優遇はもちろん、将来性のある資産運用も期待できます。また近年は、各都道府県の自治体で管理している「空き家バンク」も活性化してきているので、公共機関の協力を得るのも1つの手です。耐震診断の依頼を検討している場合は、実績のある専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

参考:

・長期優良住宅の認定条件|ホームズ君 よくわかる木構造

・【空き家】解体|NPO法人 空家・空地管理センター

・「補助金」を確実に貰うための条件&方法|株式会社ピタコラム

・新築住宅等には固定資産税の減額措置がある|オールアバウトマネー

・知っていますか? 空き家を解体するときには助成金が出ます|マネーの達人

・新耐震木造住宅検証法|一般財団法人・日本建築防災協会(PDF)

・耐震化助成制度|東京都 耐震ポータルサイト

taishin nippon

-present U’plan- 耐震や構造の情報を広く発信しています。

0コメント

  • 1000 / 1000