こんにちは、ケンです。
前回は、卵の殻のような滑らかなシェルが実現不可能だとわかり、振り出しに戻った屋根の設計が、シェルをリブで補強する案が採用されることにより、応力的にはどうにか設計出来そうな見通しが立つところまでを、お話しました。
しかし、シェルのような曲面を用いた建築物では、いかに設計するのかということと同時に、いかにつくるのかという施工上の諸問題が、重要な論点となります。
シェル構造の建設コストは、一般に構造体そのものよりも、型枠・支保工により多くの費用がかかります。小規模なものであれば、任意の形状を手間暇をかけて、つくることはできます。
しかし、シドニーオペラハウスのような単一のビッグプロジェクトでは、繰り返しのない複雑な曲面では、型枠の作成に膨大な時間とコストがかかりすぎ、現実的には建設不可能になってしまいます。
そこで、ウッツォンは、屋根の複雑な曲面をひとつの球形の一部と見立てるアイデアを思い付きます。全ての曲面をひとつの球の曲面から切り出す。球であれば、どこでも曲率は一定ですから、型枠はいくらでも再利用できますし、工場で効率的にプレキャストすることも可能になります。方針が決定され、ようやくプロジェクトは実現に向けて動き出すことになります。
(次回につづく)
0コメント