片持ち材について

前回、片持ち床の作り方をご紹介いたしました。

今回は、前回の最終行『何故、片持ち床周辺の懐に余裕が必要なのか?』を『片持ち材の検討』を通してご紹介したいと思います。

むずかしいお話ですが、お付き合いください。


○1点目

建築基準法に使用上の支障の検討というものがあり、部材のたわみ量に対して上限が決まっています。

片持ち材は部材の根元でしか繋がっていないため、たわみやすい部材です。

そして、この『たわみにくさ』を向上させるには、成(スラブ厚・梁成)を大きくする方が効果が高いのです。


○2点目

片持ち長さが2mを超えた場合に、短期地震時の縦揺れの検討が必要になります。

この場合の短期地震時の検討は、下記の式で行えます。

『 短期検討用荷重 = 長期荷重 + 鉛直震度1.0の地震時荷重 』


「鉛直震度1.0の地震時荷重」=「地震時の縦揺れ荷重は長期荷重*1.0の荷重とする」 という意味です。

従って、片持ち長さが2mを超えた場合の短期時は、長期荷重の2倍の力で検討することになります。

短期時の部材耐力は長期時の1.5倍ですので、長期の2倍の荷重/長期の1.5倍の耐力という検討になります。


例えば、長期荷重が100,長期耐力が150の場合

 →長期時は、100/150=0.67 約30%の余裕があります。

 →短期時は、(2*100)/(1.5*150)=0.89 約10%の余裕に減ります。

仮に、短期時に20%の余裕を確保しようとすると、0.89/0.8=約1.2となり当初の部材の1.2倍の耐力が必要ということになります。


部材耐力を大きくする時も、成(スラブ厚さ・梁成)を大きくする方が効果が高いです。

また、スラブの片持ち長さが2mを超えた場合は安全性に配慮し、片持ち梁を設けるなどを行います。

片持ち梁を設けた場合には受梁も設けます。(コラム第6回参照)

この受梁は、片持ち梁と繋がっており応力が伝達するので、片持ち梁と同じ耐力が必要になります。

そして、この受梁は室内側に設けますので、天井懐のスペースが必要になります。


以上より、片持ち材(床)の周辺の懐には余裕が必要となるわけです。

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